2026年04月28日

アイス好きではなかった私の開業理由

アイス好きではなかった私の開業理由

アイスが好きではなかった私が、センター北でジェラート専門店を始めた理由

ジェラート専門店をやっていると言うと、昔からアイスが大好きだったと思われるかもしれません。

でも実は、私はもともとアイスが好きではありませんでした。

アイスクリームも、ジェラートも、人生でそれほど多く食べてきたわけではありません。
ジェラートと聞いても、甘ったるくて冷たい、シャリシャリした食べ物。
正直、そのくらいの印象でした。

そんな私が、なぜ横浜・センター北でジェラート専門店を始めることになったのか。

今回は、Nicolitaを始めるまでのこと、そして一年続けてきた今感じていることを、少しお話しします。

料理人の世界は、自分とは遠いものだった

昔から料理は大好きでした。

食べ歩きや旅行も好きで、世界各地でいろいろなおいしいものを食べてきました。
家でも、料理を人に振る舞うのは好きでした。

ただ、それを職業にするとなると、まったく別の話です。

長年修業をして、師匠について、何年もかけて技術を身につけていく。
料理やスイーツの世界は、どこか「自分とは別の能力や才能を持った人たちの世界」だと思っていました。

私は長くIT系企業で会社員として働いてきました。
商品企画やマーケティング、広報などの仕事を経験する中で、情報を集め、仮説を立て、数字を見て、改善する。

そうしたプロセスで仕事を進めることは、自分にとっては自然なものでした。

ジェラートは、緻密に計算するスイーツだった

そんな私の考え方が変わったのは、たまたま見ていたテレビ番組がきっかけでした。

そこで、ジェラートが作られる工程を目にしました。

驚いたのは、ジェラートがとても緻密に計算して作られるスイーツだったことです。

素材の水分量、糖度、脂肪分、固形分、食感、口どけ。

一定のルールのもとでそうした要素を考え、配合を組み立て、製造マシンに入れてジェラートに仕上げていく。

長年の勘に頼る世界ではなく、数値や理屈で考え、検証し、調整していける世界でもある。

そのことに、強く惹かれました。

ある意味で、ジェラートは「誰でも作れる」面白さがある。
でも同時に、それだけでは完成にはならず、どこまでも奥が深い。

その両方を感じたことが、私に電流が走った瞬間でした。

地元の農作物と、ジェラートは相性がいいと思った

もうひとつ、強く惹かれた理由があります。

それは、ジェラートと地元の農作物の相性の良さです。

横浜・都筑には、まだまだ知られていない食材がたくさんあります。
近くで丁寧に育てられている野菜や果物があるのに、その魅力は意外と知られていません。

それを、ジェラートという形にしたらどうだろう。

野菜や果物の香り、甘み、酸味、食感。
その個性を、冷たくなめらかなスイーツとして届けることができたら、地元の食材をもっと身近に感じてもらえるのではないか。

地元で育った食材をジェラートにすることは、私にとって「おいしいものを作る」だけではなく、地元の魅力を新しい形で伝える方法でもありました。

センター北に、地元ならではのお店をつくりたかった

Nicolitaを始める場所として、センター北を選んだのにも理由があります。

私はもともと、この地域に長く住んでいます。
センター北は、駅前にショッピングセンターがあり、買い物にも食事にも便利な街です。

便利で暮らしやすい街だからこそ、地元の良さを生かした、地元ならではのお店がもっと増えたらいいのにと思っていました。

横浜・都筑で育った野菜や果物を使い、ジェラートという形で届けるお店があったらどうだろう。

地元の食材を知るきっかけになる。
お散歩の途中に、ふらっと立ち寄れる。
誰かに「センター北にこんなお店があるよ」と紹介したくなる。

そんな場所をつくれたらと思い、この地でNicolitaを始めることにしました。

野菜ジェラートは、マーケティング目線だけならやらなかったかもしれない

正直に言うと、マーケティング目線だけで考えたら、開業当初から野菜のジェラートには挑戦していなかったかもしれません。

小松菜。
長ネギ。
里芋。
ほうれん草。

初めて聞く方にとっては、かなり尖って見えるフレーバーです。
実際、開業前には「最初から尖りすぎると失敗する」と言われました。

それでも、地元の農作物とジェラートは相性がいいはずだという直感がありました。
そして、そこに使命のようなものも感じていました。

一年続けてみると、思っていた以上に多くの方がその考えに賛同してくださり、味に納得し、自然に注文してくださるようになりました。

当店では、野菜のジェラートに合わせる調味料として、七味唐辛子や黒胡椒などを店頭に置くことがあります。
開業当初こそ皆さん驚かれていましたが、今では当たり前のようにお好みのスパイスを振りかけて召し上がる方も多くいらっしゃいます。

机の上で考えた“売れそう”だけでは作れないものがある。
でも、作り続け、伝え続けることで、少しずつ育っていく味がある。

この一年で、そのことを実感しています。

毎回、壮大な実験を繰り返しているよう

ジェラートは、再現性が高いようでいて、実は毎回同じようには仕上がりません。

同じ食材でも、水分量が違う。
糖度が違う。
香りが違う。
収穫時期や天候、熟し具合によって状態が変わる。

だから、前回うまくいった配合をそのまま使えば同じ味になる、というわけではありません。

そこが難しさでもあり、魅力でもあります。

食材を見て、触って、味を見て、どう組み合わせるか考える。
甘さをどこまで足すのか。
ミルクと合わせるのか、ソルベにするのか。
別の食材と組み合わせるのか。

答えは毎回違います。

毎回、壮大な実験を繰り返しているような感覚があります。

だから飽きない。
だから面白い。

お客様や農家さんと一緒に、新たな食材と食材の組み合わせの旅を楽しんでいる。
今は、そんな気持ちでジェラートを作っています。

小さなカップでも、満足感があるものを

Nicolitaのカップは、それほど大きなサイズではありません。

それでも、食べてくださった方からは「満足感がある」と言っていただくことが多くあります。

それは、重たく残る感じではなく、ペロッと食べられる。
「何杯でも行けそう」と言ってくださる方も多くいらっしゃいます。

私が作りたいのは、まさにそういうジェラートです。

しっかり満足感がある。
でも、重たすぎない。
素材の味は濃く感じる。
でも、甘ったるくない。
食べ終わったあとに、またもう一口食べたくなる。

もともとアイスが好きではなかった私でも、毎日食べたくなるジェラート。

それが、Nicolitaの味づくりの基準です。

一年で約150種類。けれど、まだまだ試したい味がある

開業してから一年で、Nicolitaでは約150種類のフレーバーを開発してきました。

自分でも、よくここまで作ってきたなと思います。
でも同時に、まだまだ試してみたい食材があります。

地元には、まだ知られていない食材がたくさんあります。

見た目が不揃いで市場に出にくいもの。
たくさんは作られていないけれど、味わい深いもの。
普段はスイーツになると思われていないもの。

そうした食材に出会うたびに、

「これはどんな形でジェラートにできるだろうか」
「何と合わせたらおいしくなるだろう」

と考えます。

その瞬間が、今でもとても楽しいです。

ジェラートは、単なる冷たいスイーツではありません。
食材の可能性を広げられるもの。
地域の農作物を知るきっかけになるもの。
そして、お客様と一緒に新しい味を楽しめるもの。

そう感じています。

これからも、新たなフレーバーとの出会いの旅を

Nicolitaを始めたとき、私はジェラートの緻密さと、地元食材との相性の良さに惹かれていました。

一年経った今は、それに加えて、お客様や農家さんと一緒にこのお店を育てている感覚があります。

最初は驚かれた野菜のジェラートも、少しずつ受け入れていただけるようになりました。
「次はどんな味が出るんだろう」と楽しみにしてくださる方も増えました。

それは、開業前には想像していなかった喜びです。

地元には、まだまだ知られていない食材がたくさんあります。

これからも、お客様とともに、新たなフレーバーとの出会いの旅を楽しみながら、Nicolitaは進化を続けていきたいと思っています。

アイス好きな方はもちろん、私も含め、アイスが好きではなかった方も、毎日でも食べたくなるジェラートを。

横浜・センター北の小さなお店から、これからもひとつずつ作っていきます。

Nicolita店主